広報の仕事に生成AIを使うには? プレスリリースのたたき台・SNS投稿案・取材の想定問答の頼み方と確認の型


SETODEZA合同会社 代表 / せとうちAI 編集長
BBT大学卒業。システム開発・スタートアップ支援・マーケティングを経て生成AI事業を開始。SETODEZA合同会社代表として岡山・香川の中小企業へのAI導入を支援するほか、岡山市ももスタ「NoCodeBootCamp」を運営。せとうちAIの企画・編集を担当。
中小企業では、総務や営業と兼ねて広報を担当している方もいるでしょう。新しいサービスを始めるたびにプレスリリースを書き、SNSにも投稿し、取材の申し込みがあれば準備をする。その「最初の下書き」を生成AIに任せると、白紙から書く時間を減らせる可
- この記事の対象
ほかの仕事と兼ねて広報を担当していて、プレスリリースやSNSの文章づくりに生成AIを使いたい、岡山・香川などの中小企業の担当者・経営者
- 結論
- 生成AIには、プレスリリース・SNS投稿案・取材の想定問答の「下書き」を任せ、事実の確認と最終判断は人がする
- プレスリリースは、事実のメモと構成の型を渡し、メモにない数字や言葉を書かせない頼み方にする
- 公開前に、数字・日付・固有名詞・コメント・他社の作品に似ていないかを、一次資料と照らして確かめる
- 発表前の情報をどのAIに入れてよいか、AIを使ったことをどう扱うかは、使い始める前に社内で決めておく
中小企業では、総務や営業と兼ねて広報を担当している方もいるでしょう。新しいサービスを始めるたびにプレスリリースを書き、SNSにも投稿し、取材の申し込みがあれば準備をする。その「最初の下書き」を生成AIに任せると、白紙から書く時間を減らせる可能性があります。
この記事では、プレスリリース・SNS投稿・取材対応の3つの仕事について、自社に合わせて書き換えて使えるプロンプト(AIへの指示文)のひな形と、公開前に人が確かめる点をまとめます。大事な前提は1つです。AIが作るのは下書きで、事実を確かめて世に出す判断をするのは人です。
なお、広告の文や市場調査など、マーケティング寄りの使い方はこの記事では扱いません。
広報の仕事で生成AIを使うとは
広報の仕事で生成AIを使うとは、プレスリリースやSNSの投稿案などの下書きをAIに作らせ、内容の確認と最終判断を人が行う使い方のことです。
人が確認しなければならない理由は、AIが事実と違う内容を、もっともらしく書くことがあるからです。これを「ハルシネーション」と呼びます。GoogleのGeminiアプリのヘルプには、「Gemini は「ハルシネーション」を起こし、不正確な情報を事実と錯覚して提示することがあります。」と書かれています。AnthropicのClaudeのヘルプも、正しく見えても大きく間違っている文を書くことがあり、Claudeだけを唯一の情報源にしないよう求めています(いずれも2026年10月時点)。
広報の文章は、会社の名前で外に出ます。日付や価格を1つ間違えるだけで、訂正の手間がかかり、信頼にも関わります。AIに任せる部分と、人が必ず見る部分を分けておくことが出発点です。
どの仕事に向いていて、どこに向かないか
| 仕事 | AIに任せやすいこと | 人が必ずすること |
|---|---|---|
| プレスリリース | 構成に沿った下書き、タイトル案を複数出す、言い回しを整える | 数字・日付・価格・社名・役職の確認、代表のコメントの確認、発表の判断 |
| SNS投稿 | 公開済みのリリースからの要約、長さや口調を変えた案 | 投稿する案を選ぶ、誤解を招く表現がないかの確認 |
| 取材対応 | 想定される質問の洗い出し、答えの骨子 | 答えてよい範囲の判断、数字や方針の確認、当日の受け答え |
逆に、AIに向かないのは「事実を決めること」です。発売日・価格・実績の数字・お客様の声は、AIに考えさせるものではありません。手元の資料にない情報をAIに補わせると、もっともらしい作り話が混ざるおそれがあります。
始める前に、社内で決めておく3つのこと
1. 発表前の情報を、どのAIに入れてよいか
プレスリリースは、発表するまで社外に出してはいけない情報のかたまりです。どのAIサービス・どの契約なら入れてよいかを、使い始める前に決めておくことをおすすめします。
個人情報については、個人情報保護委員会が2023年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を出しています。事業者が個人情報を含むプロンプトを入れるときは、利用目的の範囲内かを十分に確かめるよう求めています。また、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入れ、それが応答の出力以外の目的で使われる場合には、サービスの提供者がそのデータを機械学習に使わないことなどを十分に確認するよう求めています。ただし、この注意喚起は個人情報が対象で、発表前の新商品の情報のような社内の機密について直接定めたものではありません。社内の機密の扱いは、自社でルールを決める必要があります。
AIの使い方が原因で情報が漏れた事例は、AIで情報が漏れるって本当? 2026年の3つの事例に共通する原因で整理しています。
2. 誰が最終確認をするか
AIを使うと、書くのは速くなっても、確認の手間は残ります。下書きを作る人とは別に、公開前に読んで承認する人を決めておくと、見落としを減らせます。
3. AIを使ったことをどう扱うか
日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)の「PR活動ガイドライン」(2025年6月27日改訂)には、生成AIについて「特に生成AIを活用したコンテンツにおいては権利侵害をしないよう十分に確認する。」という一文があります。一方で、広報の文章にAIを使ったことを開示するよう求める業界団体や公的機関の指針は、今回の調査(2026年10月時点)では見つかりませんでした。
開示が決まりになっているわけではありませんが、取引先や記者から聞かれたときに答えられるよう、「どの仕事にAIを使い、誰が確認しているか」を社内で決めておくと安心です。
プレスリリースのたたき台を作る手順
構成の型
プレスリリース配信会社の共同通信PRワイヤーの解説では、新しいサービスのプレスリリースを、次の順で構成するよう説明しています。
- 発信日・発信者
- タイトル
- リード文(全体を短くまとめた最初の段落)
- 本文(結論から書き、そのあと背景→本題→展開の順)
- 新サービスの概要
- 問い合わせ先
同じ解説では、「会社概要」と「問い合わせ先」は必ず書き、リリースの末尾に明記するよう求めています。そのため、下のプロンプトでは、概要と問い合わせ先の間に会社概要を入れています。
これは配信会社の解説です。業界団体や公的機関の公式の決まりは、今回の調査では見つかりませんでした。自社で使い慣れた形があれば、そちらを優先してかまいません。
手順
- 上の構成の型と、下の「事実のメモ」をそろえる
- 事実のメモを埋める。分からない項目は空けておく
- 下のプロンプトをAIに貼り、たたき台を作らせる
- AIが出した【要確認】の箇所を埋め、事実のメモと1行ずつ照らし合わせる
- 最終確認をする人に読んでもらう
プロンプトのひな形
あなたは中小企業の広報担当の補佐です。
下の【事実のメモ】だけを使って、プレスリリースのたたき台を作ってください。
条件:
- 構成は「発信日・発信者/タイトル/リード文/本文/概要/会社概要/問い合わせ先」の順にする
- 本文は結論から書き、そのあと背景、本題、今後の展開の順にする
- 【事実のメモ】にない数字・日付・固有名詞・お客様の声・コメントは書かない
- 足りない情報は【要確認】と書いて空けておく
- 「業界初」「必ず」など、根拠を示せない言い方は使わない
- タイトル案は3つ出す
- 最後に、事実のメモと照らして確認が必要な箇所を箇条書きにする
【事実のメモ】
・何を始めるか:
・いつから:
・誰向けか:
・価格・条件:
・始める理由(背景):
・代表のコメント(本人が実際に話した言葉):
・会社概要:
・問い合わせ先(担当者名・電話・メール):
ポイントは、「メモにない情報を書かない」「足りなければ空ける」と、はっきり指示することです。代表のコメントをAIに考えさせると、本人が言っていない言葉が会社の発表として出てしまいます。コメントは本人の言葉をメモに入れるか、AIの案を本人に直してもらいましょう。
SNSの投稿案を作るプロンプトの例
SNSの投稿は、すでに公開したプレスリリースやWebページをもとに作ると、事実のずれが起きにくくなります。先に紹介した共同通信PRワイヤーの解説でも、自社の公式サイトやSNSは、原則として情報解禁日時(発表してよいと決めた日時)以降に公開するよう勧めています。
下の【公開済みのお知らせ】をもとに、会社のSNSアカウントで使う投稿案を3つ作ってください。
条件:
- 1つの案は◯字以内にする
- 口調は「です・ます」で、親しみやすくする
- 【公開済みのお知らせ】にない内容は足さない
- 日付・価格・申し込み方法は、お知らせの表記のまま使う
- 3つの案は、伝える切り口(誰に役立つか、何が新しいか、いつからか)を変える
【公開済みのお知らせ】
(ここにリリースの本文を貼る)
文字数の上限や、ハッシュタグ・リンクの扱いはSNSによって違います。使うSNSの公式の案内を見て、◯の数字を決めてください。
取材対応の想定問答を作るプロンプトの例
取材の申し込みがあったら、想定される質問を洗い出す作業にAIを使えます。
地元の新聞社から、下の【発表内容】について取材を受けます。
記者から聞かれそうな質問を10個挙げ、それぞれに答えの骨子を付けてください。
条件:
- 答えにくい質問(費用、競合との違い、うまくいかなかったらどうするか など)も含める
- 答えの骨子は【発表内容】と【社内の資料】に書かれたことだけで作る
- 資料にないことは「要確認」と書き、答えを作らない
- 公表していない数字や取引先の名前は、答えに入れない
【発表内容】
(リリースの本文を貼る)
【社内の資料】
(会社概要、サービスの説明資料など、社外に出してよい資料を貼る)
AIが出す答えは、あくまで準備のためのメモです。答えてよい範囲は社内で決め、当日は自分の言葉で話しましょう。
AIによっては、資料や指示をまとめておける機能があります。たとえばClaudeの「Projects」は、チャットの履歴と資料をまとめた作業スペースを作り、資料を入れておける機能です(2026年10月時点、Anthropicのヘルプ)。会社概要や口調の指示を入れておけば、毎回貼り直す手間を減らせます。使えるプランや、ほかのAIの似た機能は、各社の公式のヘルプで確認してください。
公開前のチェックリスト
AIが作った下書きを使うときは、公開の前に次を確かめます。
- [ ] 日付・曜日・価格・数字が、社内の一次資料と合っている
- [ ] 社名・商品名・人名・役職の表記が正しい
- [ ] 代表や担当者のコメントは、本人が確認した
- [ ] 「業界初」「No.1」など、根拠を示せない言い方がない
- [ ] 他社の文章や画像に、そっくりな部分がない
- [ ] 事実を正確に伝え、誤解を招く書き方になっていない
- [ ] 数字の根拠になる資料を示せる
- [ ] 発表前の情報を、社内で認めていないAIに入れていない
- [ ] 最終確認をする人が、公開前に読んだ
PRSJのガイドラインにも、事実の正確な開示を心がけ、誤解を招く表現をしないこと、客観的なデータなどの裏付けとなる資料を添えることが書かれています。AIを使っても、この考え方は変わりません。
よくある疑問
AIが作った文章や画像を、広報に使っても著作権は大丈夫?
文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日、文化審議会著作権分科会法制度小委員会)では、AIで作ったものを生成・利用する段階で、既存の作品との「類似性」(似ているか)と「依拠性」(既存の作品をもとにしたか)の両方が認められれば、著作権侵害に当たりうるという考え方が示されています。なお、この文書は公表時点の考え方で、文書自体に法的な拘束力はないと明記されています。
この考え方を踏まえると、広報の実務では、特定の作品やキャラクターに似せる指示をしない、出てきたものが既存の作品に似ていないかを確かめる、という2点を習慣にするのがよいと考えます。判断に迷うものは、使う前に専門家に相談してください。
AIで書いたことを、リリースに書かないといけない?
今回調べた範囲(2026年10月時点)では、広報の文章でAIの利用を開示するよう求める業界団体や公的機関の指針は見つかりませんでした。義務として決まっているわけではないので、自社の方針として決めておくのがよいと考えます。
ChatGPT・Claude・Gemini、どれを使えばいい?
この記事のプロンプトは、特定のAIに限らず使える書き方にしています。会社でどのAIを契約するかは、発表前の情報を入れてよい契約かどうか(上の「始める前に、社内で決めておく3つのこと」)を先に決めてから選ぶのがおすすめです。
文章が苦手でも、AIがあれば広報ができる?
AIは下書きを速く作る助けにはなりますが、何を発表するか、どの事実を伝えるかを決めるのは人です。また、AIの文章はもっともらしく見えるぶん、誤りに気づきにくいこともあります。チェックリストで確かめる時間は、必ず取ってください。
まとめ
- 生成AIに任せるのは、プレスリリース・SNS投稿・想定問答の「下書き」まで
- プレスリリースは、事実のメモと構成の型を渡し、メモにない情報を書かせない
- SNSの投稿案は、公開済みのお知らせから作ると事実のずれが起きにくい
- 公開前は、数字・固有名詞・コメント・他社の作品との類似をチェックリストで確かめる
- 発表前の情報の扱いと、AIを使ったことの扱いは、使う前に社内で決めておく
社内でAIの使い方をそろえたい、広報の担当者がプロンプトの書き方を学びたいという場合は、せとうちAIの生成AIの研修・勉強会もご覧ください。
次にできること
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