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製造業のAI活用、中小企業はどこから始める? 外観検査・設備保全・技能の伝承を整理

ガイド·2026.10.23·最終検証: 2026.10.22·9 min read·
製造業のAI活用、中小企業はどこから始める? 外観検査・設備保全・技能の伝承を整理
赤木 孝臣

SETODEZA合同会社 代表 / せとうちAI 編集長

BBT大学卒業。システム開発・スタートアップ支援・マーケティングを経て生成AI事業を開始。SETODEZA合同会社代表として岡山・香川の中小企業へのAI導入を支援するほか、岡山市ももスタ「NoCodeBootCamp」を運営。せとうちAIの企画・編集を担当。

AIを使えと言われても、工場のどこに使えばいいのか分からない。そんな岡山・香川などの中小製造業の経営者・現場の責任者向けの記事です。

この記事の対象

岡山・香川などで、検査の人手や熟練者の技能の引き継ぎに悩み、AIで何ができるかを知りたい中小製造業の経営者・現場の責任者

結論
  • 検査・保全・技能の伝承は、AIに必要なもの(設備・データ・費用)が違うので、分けて考える
  • 今ある生成AIで試しやすいのは、作業の動画や写真から手順書の下書きを作り、熟練者が直す技能の伝承
  • 外観検査AIは、今の検査の時間・不良の種類・見本の画像を洗い出してから、相談先や補助金のカタログで検討する
  • チャットの生成AIは画像の数え間違いなどがありうるので、検査そのものの代わりにはしない

AIを使えと言われても、工場のどこに使えばいいのか分からない。そんな岡山・香川などの中小製造業の経営者・現場の責任者向けの記事です。

この記事では、製造現場のAI活用を「外観検査」「設備の保全」「技能の伝承」の3つに分けて、それぞれに何が必要かを整理します。先に答えを書くと、追加の設備がなくても試しやすいのは技能の伝承(手順書の下書きづくり)です。外観検査や保全は、準備と相談をしてから検討するのがよいと私たちは考えています。

中小企業庁のミラサポplusの紹介ページでは、2026年版ものづくり白書(2026年5月29日掲載)が、AI・デジタル技術の活用を製造業の競争力を高める鍵の1つとして扱っていると紹介されています。

製造業のAI活用とは:3つの領域で必要なものが違う

この記事でいう製造業のAI活用とは、製品の検査、設備の保全、技能の伝承など、現場の仕事の一部をAIに手伝わせることです。

ひと口に「AI活用」と言っても、領域によって必要なものがまったく違います。次の表は、私たちの整理です。

領域AIに手伝わせること主に必要なもの始めやすさ
技能の伝承作業の動画・写真から手順書の下書きを作るスマートフォン、会社で使う生成AI、熟練者の時間試しやすい
外観検査製品の画像から傷・汚れなどの不良を見分けるカメラ・照明などの装置、良品と不良品の見本の画像準備と投資が要る
設備の保全設備のデータからいつもと違う兆しを見つけるセンサーなどで集めた設備のデータ、故障の記録データを集めるところから

設備のデータからいつもと違う兆しを見つけ、壊れる前に手を打つ考え方を「予知保全」と呼びます。外観検査や予知保全は、専用の装置やデータが前提になるため、生成AIのチャットだけでは完結しにくいと私たちは考えています。

技能の伝承:生成AIで手順書の下書きを作り、熟練者が直す

熟練者の作業を手順書にしたいが、書く時間がない。そんな現場では、生成AIに下書きを作らせ、熟練者は直すことに時間を使う分担が試せます。

使える生成AIの機能(2026年10月時点)

  • Gemini(Google): 開発者向けの公式文書では、動画の映像と音声の両方を読み取り、内容の説明や質問への回答ができ、「MM:SS」の形で時点を指定して質問できると説明されています。ただし標準では1秒に1コマで映像を取るため、速い動きの細かいところは取りこぼすことがあります。アプリや会社のプランで同じように使えるかは、Google の公式ヘルプで確かめてください
  • Claude(Anthropic): 画像(JPEG・PNG・GIF・WebP)を読み取れます。claude.ai では1回のメッセージに20枚まで、1枚10MBまで送れ、複数の画像を比べられます。公式文書には、画質の低い画像や小さい画像では誤ることがある、物の数は近い数になるが正確とは限らない、と書かれています。確認できたのは画像の読み取りで、動画を直接扱えるとの記述は見つかりませんでした。Claude を使うときは、作業を工程ごとの写真にして使います

手順(5つのステップ)

  1. 作業を1つ選ぶ。 よく行うのに、できる人が少ない作業から選びます
  2. 撮る。 熟練者に、何をしているかを声に出しながら作業してもらい、スマートフォンで撮ります。Gemini を使うなら動画、Claude を使うなら工程ごとの写真にします。顧客名や社外秘の図面が映らないようにします
  3. AIに下書きを作らせる。 下のプロンプトの例を使います
  4. 熟練者が直す。 力加減・音・手ざわりなど、映像に映らないコツを書き足してもらいます
  5. 若手が使ってみる。 分からなかったところを熟練者に戻し、手順書を直します

プロンプトの例

あなたは製造現場の作業手順書を作る担当です。
添付は「(作業名)」を熟練者が行った動画(または工程ごとの写真)です。
次の形で、手順書の下書きを作ってください。

- 手順を番号付きで、1つの手順を1文で書く
- 手順ごとに、写真の番号を書く。動画の場合は、おおよその時点(MM:SS)を書く
- 使っている道具・部品が分かれば書く
- 映像から読み取れないこと(力加減、音、温度、良し悪しの判断の基準など)は推測で書かず、
  「熟練者に確認」として質問の形で最後に並べる
- 安全に関わりそうな動作には「安全の確認」と印を付ける

「推測で書かず、質問にする」という指示は、AIが映像からもっともらしい説明を足すのを減らし、熟練者に聞くべきことを洗い出すためのものです。AIが書いた時点や手順は間違うことがあるので、出力は必ず熟練者が動画や現場と照らして確かめます。

外観検査AI:検討する前に洗い出したいこと

外観検査AIは、カメラで撮った製品の画像からAIが不良を見分ける仕組みです。カメラ・照明・判定のソフトを組み合わせた装置が要ることが多く、ある程度の投資になると考えられます。

国の中小企業省力化投資補助金の製品カタログ(カタログ注文型)には、「AI外観検査用画像処理システム」(2026年4月23日掲載)など、検査の製品が載っています(2026年10月22日に確認)。補助率・上限額・締切は、公式サイトで確かめてください。

装置の話を聞く前に、次のことを社内で洗い出しておくと、相談先との話が早く進むと考えています。

洗い出しのチェックリスト

  • [ ] 今の検査に、1日(または1ロット)何人・何時間かけているか
  • [ ] 見つけたい不良の種類(傷・汚れ・欠け・寸法など)を言葉で挙げられるか
  • [ ] 良品と不良品の見本の画像を、それぞれ集められるか
  • [ ] 製品の種類はいくつあり、どのくらいの頻度で切り替わるか
  • [ ] 置き方・向き・照明を、毎回そろえられるか
  • [ ] AIが「不良かも」と判定したとき、誰がどう最終判断するか
  • [ ] 見逃しと、良品を不良と判定する誤りのどちらを、どこまで許せるか

チェックが付かない項目が多いときは、装置を選ぶより先に、検査の手順や記録をそろえることから始めるのが現実的です。

設備の保全:まずデータが取れているかを確かめる

予知保全には、設備の状態を表すデータと、過去の故障の記録が前提になると考えられます。紙の点検表しかない段階では、AIより先に、記録をそろえることが第一歩になります。

  • 点検表や故障の記録を、表計算ソフトに同じ形でまとめる
  • 「いつ・どの設備で・何が起きて・どう直したか」の項目をそろえる
  • 記録の様式の案づくりには、生成AIを使えます(例:「設備の故障記録の表の項目を、町工場で続けやすいように10個以内で提案して」)

記録がそろってくると、どの設備のどの故障を防ぎたいかが見えてきます。そこで初めて、センサーや専用のシステムを相談先と検討する、という順番がよいと考えています。

岡山・香川で相談できる先と補助の見方

  • 香川県産業技術センター(スマートシステム課): AIなどを使った生産工程の自動化・省力化技術の研究開発に取り組み、AIシステム担当が、AI・IoT技術や計測制御の試験研究と相談指導を担当しています(2026年10月時点の県の公式ページ)
  • 岡山市の IoT・AI等先端技術導入支援補助金(事前検証事業): 先端技術を本格的に入れる前の事前検証を補助する制度です。2026年10月22日に確認したページでは、補助率1/2(上限150万円)と表示されています。ページには募集(3)の締切が2026年9月30日と書かれていて、10月22日時点の受付状況ははっきりしません。岡山市に問い合わせてください
  • 中小企業省力化投資補助金の製品カタログ: 上で触れたとおり、外観検査の製品も載っています。カタログに載っているかどうかと、自社の課題に合うかどうかは別なので、上のチェックリストを先に済ませておくのがおすすめです

よくある疑問

小さな工場でも、AIを使えますか?

技能の伝承の手順書づくりなら、スマートフォンと会社で使う生成AIから試せます。外観検査や予知保全は、装置やデータが要るため、規模や製品によって向き不向きがあります。

チャットの生成AIに製品の写真を見せれば、検査の代わりになりますか?

代わりにはしないでください。Claude の公式文書には、画質の低い画像や小さい画像では誤ることがあり、物の数は正確とは限らないとあります。ほかのチャットの生成AIでも、合否の判断を任せるのは避けるのが安全と考えます。チャットの生成AIは手順書の下書きや記録の整理に使い、合否の判断は人か専用の検査装置で行います。

熟練者のコツは、AIで残せますか?

動画や写真から、手順の下書きを作るところまでは手伝えます。ただし、力加減や手ざわりなど映像に映らないことは、熟練者が言葉にしないと残りません。AIは「何を聞けばよいか」を洗い出す道具として使うのが現実的です。

動画や写真をAIに入れても大丈夫ですか?

会社として使ってよいAIサービスと、入れてよい情報を先に決めてください。顧客名・図面・社外秘の工程が映る動画は、決まりがないまま個人のアカウントに入れないようにします。AIで情報が漏れた事例と原因は「AIで情報が漏れるって本当? 2026年の3つの事例に共通する原因」で紹介しています。

合わない場合と注意点

  • 事例の数字を前提にしない。 今回の調べでは、中国・四国の中小製造業がAIで外観検査・保全・技能の伝承に取り組んだ、出典のある公表事例は見つかりませんでした。他社の効果の数字を当てはめず、自社で小さく試して確かめてください
  • 機能やプランは変わる。 この記事の生成AIの機能は2026年10月時点の公式文書によるものです。使う前に、各社の公式の情報を確かめてください
  • 補助金ありきで選ばない。 補助の対象かどうかより、解決したい検査や作業がはっきりしているかを先に確かめます
  • AIの出力は人が確かめる。 手順書は熟練者が、検査の判定は担当者が、最終的に確認します

まとめ

  • 製造業のAI活用は、外観検査・設備の保全・技能の伝承で、必要な設備・データ・費用が違う
  • 試しやすいのは技能の伝承。作業の動画や写真から生成AIに手順書の下書きを作らせ、熟練者が直す
  • 外観検査AIは、今の検査の時間・不良の種類・見本の画像を洗い出してから、相談先や補助金のカタログで検討する
  • 予知保全は、点検や故障の記録をそろえるところから
  • 香川なら県の産業技術センターが相談先になる。岡山市の事前検証の補助制度は、受付状況を確かめたうえで候補になる

手順書づくりのような生成AIの使い方を社内で身につけたい場合は、せとうちAIの研修のページをご覧ください。導入の相談先の選び方は「AI導入コンサルティングを岡山で頼むなら」でもまとめています。

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