建設業のAI活用、中小の建設会社は何から始める? 書類・施工管理・安全の順に整理


SETODEZA合同会社 代表 / せとうちAI 編集長
BBT大学卒業。システム開発・スタートアップ支援・マーケティングを経て生成AI事業を開始。SETODEZA合同会社代表として岡山・香川の中小企業へのAI導入を支援するほか、岡山市ももスタ「NoCodeBootCamp」を運営。せとうちAIの企画・編集を担当。
「AIで現場が変わる」という話を聞いても、紹介されるのは大手ゼネコンの事例ばかりで、自社に何ができるのか分からない。そう感じている中小の建設会社の方に向けた記事です。
- この記事の対象
岡山・香川など中国・四国の中小建設会社で、書類や残業時間の負担を減らすためにAIを使えないか考え始めた経営者・現場代理人・事務担当
- 結論
- 中小の建設会社がAIを試すなら、今あるパソコンで始められる書類づくりからが手を付けやすい
- 生成AIの出力は下書きとして扱い、数値・工程・法令に関わる部分は必ず人が元の資料で確かめる
- 施工管理や安全のAIは機器やソフトの導入が伴うことが多いため、香川県のICT補助や国の省力化投資補助金の対象になるかを公式で確かめてから検討する
「AIで現場が変わる」という話を聞いても、紹介されるのは大手ゼネコンの事例ばかりで、自社に何ができるのか分からない。そう感じている中小の建設会社の方に向けた記事です。
先に答えを書くと、まず手を付けやすいのは書類づくりです。施工管理や安全のAIは機器やソフトの導入が伴うことが多いので、補助金の対象になるかを確かめながら考えます。なお、岡山・香川の中小建設会社が生成AIを書類に使ったという公表された事例は、2026年10月時点の調べでは見つかりませんでした。そのため、この記事では事例ではなく、自社で小さく試すための手順と判断の材料をまとめます。
建設業のAI活用とは
建設業のAI活用とは、書類づくり・施工管理・安全管理などの仕事の一部を、AIに手伝わせることです。大きく次の2つに分かれます。
- 事務所のパソコンで使うAI: ChatGPT・Claude・Gemini のような生成AI(文章や資料を作るAI)に、打合せのメモや資料を読ませて下書きを作らせる使い方です
- 現場の機械やカメラに入ったAI: 建設機械に付けたカメラが人の接近を見分ける、といった使い方です
なぜ今、建設業でAIなのか
背景は2つあります。
1つ目は、時間外労働の上限規制です。建設業にも2024年4月から適用されています。厚生労働省によると、時間外労働は原則として月45時間・年360時間までです(2026年10月時点)。災害の復旧・復興の事業などの例外の扱いや細かな条件は、厚生労働省のページで確かめてください。現場が終わってから事務所で書類を作る時間も労働時間なので、時間外労働になる分は上限規制の中に収める必要があります。
2つ目は、国の方針です。国土交通省は2024年4月16日に「i-Construction 2.0」を策定し、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、つまり生産性を1.5倍にする目標を示しました。柱は「施工」「データ連携」「施工管理」の3つのオートメーション化です。
ただし、どちらの公式資料も「生成AIで書類を減らしなさい」と言っているわけではありません。書類の時間を減らす手段の1つとしてAIを試す価値がある、というのが私たちの考えです。
書類・施工管理・安全、どこから手を付ける?
3つの分野を、中小の会社にとっての始めやすさで比べると次のようになります(判断の材料は、この記事の出典にある公式情報と、私たちの見立てです)。
| 分野 | AIの使い方の例 | 始めるのに要るもの | 始めやすさの目安 |
|---|---|---|---|
| 書類 | 打合せメモの清書、社内向けの手順書や案内文の下書き | パソコンと生成AIのアカウント | 小さく試せる |
| 施工管理 | 機器やデータを使った施工管理のICT化(国交省の「ICT事例集(令和7年3月改訂版)」で、施工管理のICT化の取組が加わった) | 機器やソフトの導入、使う人の習熟 | 投資と準備が要る |
| 安全 | 建設機械のAIカメラで、近づく作業者を見分けて接触を防ぐ | カメラなどの機器の購入・設置 | 投資が要る |
安全のAIは、中国・四国の公的な記録にも出てきます。岡山労働局の笠岡労働基準監督署は、2025年8月29日の安全パトロールで、建設機械にAIセンサーカメラを付けて近づく作業者を見分け、接触を防ぐ取り組みを確認したと公表しています。ただし、このページでは、会社名や効果の数字は確認できませんでした。
書類から始めることをおすすめするのは、新しい機器を買わずに試せて、うまくいかなければすぐやめられるからです。
まず書類から:生成AIで試す5つの手順
- 試す書類を1つ決める。 最初は、社外に出さない書類が向いています。たとえば社内の打合せメモ、朝礼で話す内容の下書き、新人向けの作業手順の説明などです
- AIに入れてよい情報を決める。 図面、取引先や施主の情報、従業員の個人情報は、社内のルールが決まるまで入れないことを、私たちはおすすめします。情報漏れの原因と対策は「AIで情報が漏れるって本当? 2026年の3つの事例に共通する原因」にまとめています
- お手本を渡す。 過去の同じ種類の書類(社外秘でないもの)を渡すと、形をそろえやすくなると考えられます。公式のヘルプによると、Claude は100ページ以下のPDFなら文字と図表の両方を読み、Gemini アプリは1回の指示に最大10個のファイルを付けられます(どちらも2026年10月時点。プランで変わることがあります)
- 下書きを人が確かめる。 数量・寸法・日付・工程・法令に関わる部分は、必ず元の資料と照らし合わせます。特にスキャンした書類や写真から読み取った数値は、取り違えがないか注意して見ます
- かかった時間を記録する。 AIを使う前と後で、同じ書類にかかった時間を比べます。短くならなければ、その書類は向いていないと判断してかまいません
そのまま使えるプロンプトの例
〔 〕の中を自社の内容に置き換えて使います。
打合せメモを議事録にする
次のメモは、社内の工程打合せで書いたものです。
「決まったこと」「宿題(担当者・期限)」「次回までの確認事項」に分けて、箇条書きの議事録にしてください。
メモに書かれていないことは足さず、読み取れない箇所は「不明」と書いてください。
〔メモを貼る〕
新人向けの作業手順の説明を作る
建設会社に入ったばかりの人に、〔作業名〕の流れを説明する文を作ってください。
次の手順メモの順番と内容は変えずに、1文を短く、専門用語には簡単な説明を付けてください。
安全上の注意は、手順メモにあるものだけを書いてください。
〔社内の手順メモを貼る〕
安全に関わる内容は、AIが書いた文をそのまま使わず、必ず経験のある人が確かめてください。
機器を買うなら、補助金の対象かを先に確かめる
施工管理や安全のAIは、機器やソフトの導入が伴うことが多いです。買う前に、使える補助金があるか、欲しい製品がその対象になるかを確かめます。2026年10月22日時点で確認できたものは次のとおりです。
- 香川県 ICT活用工事普及促進事業(ICT機器導入経費の補助): ICT機器などを入れる建設事業者に、経費の一部を補助する制度です。補助率は対象経費の2分の1以内、上限は100万円です。令和8年度(2026年度)の申請期間は2026年7月27日〜8月26日で、受付は終了しています。来年度の予定は今回の調べでは確認できなかったため、香川県の公式ページで確かめてください。AIカメラや施工管理のソフトが対象経費になるかも、交付要綱・実施要領で確かめる必要があります
- 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型): 人手不足の中小企業が、カタログに登録された製品を入れるときの補助です。補助率は2分の1以下で、上限は従業員5名以下で200万円、6〜20名で500万円、21名以上で1,000万円です(2026年3月19日以降。賃上げの要件を満たすと上乗せあり)。国交省の資料では、建設業の製品カテゴリの例として、マシンコントロール・マシンガイダンス機能付きのショベルや地上型3Dレーザースキャナーなどが挙げられています(2025年4月1日時点)。AIカメラや施工管理のソフトが載っているかは確認できていないので、公式のカタログで確かめてください
岡山県については、建設業向けのICT・AIの補助金は今回の調べでは見つかりませんでした。国のデジタル化・AI導入補助金2026については「デジタル化・AI導入補助金2026、申請前に確認したいこと」も参考にしてください。
よくある疑問
図面をAIに読ませても大丈夫?
2つの点で慎重に考えます。まず精度です。図面や施工図をどこまで正しく読めるかを、AIの提供元が保証している記述は見つかりませんでした。試すなら、結果を必ず人が確かめる前提にします。次に情報の扱いです。図面には施主や取引先の情報が含まれます。入れてよいかは、社内のルールと契約の条件で決めてください。
社員が数人の会社でも意味はある?
書類から試す方法なら、会社の規模に関係なく始められます。経営者や事務担当が1人で試し、時間が短くなった書類だけを社内に広げる、という進め方ができます。
AIカメラを入れると事故はどれくらい減る?
効果を数字で示した公的な資料は、今回の調べでは見つかりませんでした。比べるときは、メーカーにどんな条件の現場で確かめた数字なのかを聞くことをおすすめします。
AIが合わない場面と注意点
- 数値や法令をAIに任せない。 数量計算、工程、上限規制の扱いなどは、AIの答えをそのまま使わないでください。労働時間のルールで迷ったら、労働基準監督署や社会保険労務士に確かめます
- 大手の事例をそのまま当てはめない。 大手ゼネコンの取り組みは、専任の部署や大きな投資を前提にしたものも多いと考えられます
- AIの機能や料金は変わる。 この記事の機能の説明は2026年10月時点のものです。使う前に各社の公式ヘルプで確かめてください
- 書類によっては向かない。 決まった様式に数値を埋めるだけの書類は、AIより表計算のひな形のほうが早い場合もあります
まとめ
- 建設業のAI活用は、事務所の生成AIと、現場の機械やカメラのAIに分けて考える
- 中小の会社は、機器を買わずに試せる書類づくりから始めやすい
- 生成AIの出力は下書き。数値・工程・法令・安全は必ず人が確かめる
- 施工管理や安全のAIは機器やソフトの導入が伴うことが多い。香川県のICT補助や国の省力化投資補助金の対象になるかを公式で確かめてから検討する
社内で生成AIの使い方をそろえたい、試し方を一緒に考えてほしいという場合は、せとうちAIの研修のページをご覧ください。
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